血の通った人間
足の悪いお年寄りには玄関まで商品を届ける。
「今日は暑かったから、冷奴いいかもね」なんて会話がある。
時にはお庭のこだわりなんかも話してくれる。
資金、品揃え、価格、駐車場、設備。
大型スーパーと勝負して、
僕の絶対的武器は、血の通った人間同士の、販売を通したコミュニケーションなのである。
最大の武器
「五六亭号」に搭載できる商品数は限界がある。
「アレある?」と聞かれて、
「ごめんなさい、今乗ってないです」
と答えなければならない場合もけっこうある。
その商品を書き留めて、次回お持ちするようにしている。
一方、大型店に行けば、膨大な種類の商品が陳列されている。
しかし、あの広いフロアを、探して歩くのは、
お客様にとっては「負担」ではないか。
特にお年寄りには。
時代は間違いなく「量より質」になってきている。
「五六亭号」は、大型店に勝てる商品とサービスを提供する。
「御用聞き」が、僕らの最大の武器になる。
今を楽しめていること
売上が徐々に上がってきた。
様々な「成果」「結果」を
僕らがそれぞれの 社会的なポジションで求められる今の時代。
求められている僕らも、 知らず知らずのうちに、
「成果」「結果」に 重要度、価値をおいてしまう。
しかし、 「結果」より大切なことがある。
「今を楽しめていること」が大切で、価値がある。
「最高の結果」はその後からついてくる、と思う。
買い物は「生きる」こと
車に乗れなくて、歩きで買い物に行こうにも、足も悪くて。
そんなお年寄りにたくさん会う。
宅配もあるけど、注文してから数日かかる。
そもそも「食」は、「その瞬間」なのである。
その時「食べたい」と思ったものが、
数日後にも「食べたい」とは限らないのだ。
それに「実際に見て選ぶ」という「楽しみ」がない。
「買物の楽しさ」をお届けするために、
「五六亭」は今日も走る。
ただ単に「商品を届ける」だけではない。
ついでに、僕という人間もお届けしている。
買い物は「生きる」ことなのかもしれない。
その時が来る
どんなに必死に押しても
ビクともしなかった大きな車輪が、
ある時ググッと動き出すと、
今までとは比べ物にならないくらいの速度で
動き出したりする。
しかも、あれほど渾身の力でも動かなかったくせに、
動き出すと止めることができないくらいに動き出す。
その時が来る。と信じる。
豆腐
豆腐は冷凍できない。
冷蔵では日持ちも数日しかない。
まとめ買いができない、ということだ。
おばあちゃん、安心して。
ちゃんと「五六亭」が豆腐を届けに行くからね。